オリンピックソリダリティセミナー(ヤンセン,滋賀1999) 受講レポート(速報版)

[Ozawa Rowing Top Page] [Seminar Library INDEX] edit:19991206 20231203


 IOC,JOCおよび(社)日本ボート協会によるオリンピックソリダリティコーチセミナー(99.12.4-5/瀬田)の受講レポート(速報版のため,近日中に細部修正の可能性あり).講師はベント・ヤンセン氏(デンマーク)で,デンマークのナショナルチーム,男子軽量級4-のコーチ.瀬田会場のセミナー運営は瀬田RCにより,司会進行は堀内哲氏,通訳は堀内剛健氏.

 以下はその受講ノート.(注:個人的記録であり,公式記録ではない.記載内容には解釈には誤解が含まれ得るので,講師および開催者の意図することとは異なる記載となっているリスクも含む点を了承されたい.なおイタリックの[感想: ]部分は,個人的な感想の部分である.


第1日

1 自己紹介およびデンマーク男子L4-の紹介.
 '96アトランタ五輪でのレースビデオ(前半3位から終盤でカナダクルーを捕らえ,僅差で優勝).
 [感想:漕力(エネルギー的側面)ではカナダクルーのほうが高いがややラフ(主にミドルペア)であるのに対し,デンマーククルーは水平に効率よく艇を進めているという印象.]

2 シドニー五輪までの練習計画の紹介
 月ごとの高強度,ロング(18-20km),ディスタンス(~30分),技術漕などの配分の計画.また,乗艇できないときの陸上トレーニング(エルゴ)や学業・仕事のスケジュールなど.2000年4月からは仕事を休んで練習に専念!

3 技術についての基本事項(概要)
 (1)体とボートの関係,(2)ボートと水の関係,(3)キャッチでのロスをなくす(艇を減速させない)ことなど,(4)トレーニングの目標として,最大酸素摂取量を増やすことや,レイトを30-32から徐々に上げていくことなど,(5)(略)

4 各期のトレーニング内容の紹介
 98年3月~11月の,いくつかの期の1週間のトレーニングメニューの紹介.1週間の各曜日の練習プログラムと設定レイト,漕距離と漕時間,トレーニングカテゴリーの時間配分の表で説明.練習期では1週間のアウティングは9回程度(週末に2部練習)で,1回の乗艇は約90分,約18km.レース期では,毎日2部練習で,1回の乗艇が約60分~90分,12km~18kmといったところ.(各曜日のトレーニングカテゴリーについては,掲載省略.A~Eのカテゴリーに区分(98年セミナーのページ参照).

5 レース前30時間(=レース前日)の紹介
 午前に8~12km,午後に8kmの定常漕.朝食は普通にとるが,午後は2/3,夕食は半分程度.軽量級としての体重コントロールのため.水分の補給は十分に行う.夕方に,戦術を説明し簡単な打ち合わせを行って就寝.(なお,戦術はそのとき固定し,レース中に状況を見て変更するようなことはない.

6 レース2時間前の食事
 スポーツドリンク2.5~3リットル,2~6個のパン(ジャムか蜂蜜付),ブドウやバナナ,1~2個のチョコレートビスケット,1杯のコーヒー(コーヒーはクルーにとっての定番になっているようだ).

7 テスト週間の紹介
 8週間毎に行うテスト週間の紹介.1日目に(1)10秒と(2)6km(レイトは任意だが彼のクルーは30~32.タイムは20分を切ることもある.),2日目に(3)2000mテスト(クルーは6’03”~6’20”)と40分の休息的ロウ(レイトは18~20),3日目に1分間全力漕(スコアは350~400m),4日目に1時間漕,5日目は休息的ロウと技術練習など.
 なおこのテストは,クルーが明確に意識できる目標を持つために実施しているものであり,トレーニングの調整や漕手のコンディションを把握するのは,むしろコーチが日々,クルーのローイングや会話のなかの観察によって把握している.(感想:当然といえば当然だが,コーチがそのように日々の観察,感じることを中心にクルーをコーチングしていることに妙に納得した.根拠や観察力を伴わない身勝手な主観は論外であるが,一方で計測データに頼り過ぎるリスクにも注意しなければならない.)

8 体重管理の話
 トレーニングキャンプで,朝の体重(朝食前,用足し後)の体重を毎日計測して,体重を管理し,レースに向けて目標体重を設定し,軽量級としての体重条件をクリアする流れの説明.ちなみに,体脂肪率は,男子で6~7%,女子で10~12%あたりを限界として,これ以上落とすことはない.

9 リギングについて
 リギングの変更は,1回に1ポジション1要素だけとし,変更とその結果は必ず記録している.いくつかの設定の紹介としては,外径は0.5°つけてキャッチで3-4°,フィニッシュで2-3°といったところ.ワーク高とともに,カバー角も個々のポジションで僅かな差があった.艇にもよるが,カバー角は0.5°~0.1°単位で把握.

10 エルゴメータによる指導

 (多くの示唆の中で,いくつかの抜粋.順不同.)

10.1 上体の姿勢とスウィングのこと
 (1)上体をまっすぐ上に伸ばした状態からリラックスさせ(背を丸く)下げた姿勢とする.(2)前後のスウィングは等量で比較的少なく無理に前後にレンジをとらない(けっこう少ないかなともとれる感じである).(3)スウィングの開始は,ドライブ開始と同時的でも良い.これらのことで,キャッチできちんと水をつかんでから,加速度的に強く水を押すことができる.また前後のスウィングを押さえることでピッチングを低減できる.全体としてハイレイトが確保できる.腰痛・背筋痛の恐れはない.(デンマークでは腰痛は問題とはならず,むしろ脇腹の疲労骨折が問題となる.)
 [感想:この部分(特に(1)について)は,出席者の多くが(そして主催側も?)最も戸惑った部分かもしれない.上述のセオリーの対極?として,腰痛を防止し大きく強力なスウィングをするために骨盤を起こした漕ぎが強調されることもあるからだ(現在のナショナルチームの基本もこの考え).しかし,(技術論の)歴史的な流れと,(それほどひどく分散的なものではないが)身体のタフネスやローイングパフォーマンス構築の多様性を考えると,これらのポイントは整理できないほど相互に矛盾をはらんでいるようには感じない.例えば,「3つの要素(ストロークレンジ,ドライブの強さ,レイト)のバランスをどのように設定するのが,艇速の増速とその維持に最も有効であるか?」ということであり,そこにクルーのタフネスやテクニカルレベルが関与し,またどうトレーニングするかにも当然かかってくる.その技術的構築の方向のひとつが,ハイレイト設定であり,レンジは過度である必要はなく,ピッチングの点でも有利(となることが多い)が,一方で技術的なレベル(特にキャッチやフィニッシュでのロスの問題)は高い水準が要求される.腰痛のリスクについては,不安なケースもあり得るが,問題のないケースもあるといったところだろう.そして別の方向性のひとつが,上体のスウィングを「適度に」できる範囲では動員するという方向である.レイトの点ではやや厳しく,ストロークレンジは相対的に大きくなり,強く引くことにより集中する必要がある.
 たとえ話をすれば,紙と筆でどういう絵を描こうか?ということに似ている.半紙に筆で水墨画を描く,水彩用紙に水彩画を描く,キャンバスに油絵を描く.良いバランスと組み合わせでなければ良い絵を描くことはできないし,逆に最終的に良い絵が描くことができれば,そのスタイルは問わない.注意しなければならないのは半紙に油絵具で水彩画を描こうとすればリスクが大きいということだ.(ただしさらに補足すれば,往々にしてブレークスルーはそのような従来の常識を外れたところから,新たなバランスポイントとして創造されるものである.もちろん,だからといって,常識外れのことをすればブレークスルーできるというほど甘いものではない.ローイングに話を戻して注意点として補足すれば,常識や固定観念にとらわれずチャレンジする必要はあるが,同時に選手を実験台にしてはいけないということだ.)<p>  なお,「前後のスウィングの角度を等しくする」という点については,必然的なものはないように思う.艇のピッチングへの影響については,船形やその他多くの要素がかかわる.]

10.2 水をつかんでから,加速度的に引くことへの集中の強調
 水をつかんでから,加速度的に引くことへの集中.

10.3 足の裏をつけること
 キャッチでかかとが浮くのはかまわないが,ドライブはすぐに足裏全体をつけて押すようにする.ストレッチャーの傾斜を緩くしてもよい.緩すぎる傾斜の把握のひとつは,足の甲に張力を感じるような緩傾斜の場合.

10.4 ファイナルの肘のポジション
 フィニッシュまで引ききったところでリラックスできる位置として,肘が高くあがった感じはよくない.
 [感想:指導された動作は,特に肩の背後の筋群の動員があまり有効ではないという印象をうけた.]

10.5 ストレッチャーハイトの設定
 特に大腿部,下腿部の長さなどとの関係で調整すること.下腿部が短い場合にはストレッチャーハイトを上げるという意味.

10.6 つま先と膝のポジション
 股関節とヒールを含む鉛直面に,膝とつまさきをそろえること.特に力を有効に発揮し,膝の故障を防ぐために重要.

10.7 ドラッグファクター
 エルゴメータ(CII)のドラッグファクターを毎回,適切に設定すること.(モニターのrestとreadyを同時に押せば表示される.ダンパで調整.軽量級男子で110-115,女子で110以下.)

11 質疑応答

Q1 スタートの高負荷でも,背中をリラックスさせるイメージは同じか?
 基本的に同じ.ただ若干は状態を開き気味に(前傾をさらに浅く)することもある.

Q2 身長の低いクルーが上体のスウィングを大きくしてレンジを稼ぐ方法はどうか?
 多少はそれで調整することがある.ただし前傾と後傾の角度はそろえること.
 [感想:スウィングを比較的コンパクトに設定しているからこそスウィングでレンジを稼ぐ余裕があると解釈すべきだろう.ヤンセンコーチのイメージに比較して,日本の一般クルーは基本的にレンジをより多くとろうとしているので,そういったクルーにおいて身長の低い漕手が非常に度を過ぎた前後傾スウィングの努力をするのは間違っている.]

Q3 スカリングからスウィープ,またはその逆の乗り換えのときの注意点は?
 スカリングからスウィープは何も問題はないのではないか?逆の場合も基本的に同じ.
 [感想:スイープからスカリング乗り換えで基本的に注意すべことのひとつは,上下動のイメージをよりコンパクトに調整し直すべきであるということだと思う.]

Q4 エントリーで注意すべきことは?
 「オールが水につかる前に脚をつかうな」ということに尽きる.

Q5 フェザーからスクウェアのハンドルワークについて
 手首の関節を軸にした動きでは,スクウェアでブレードを上昇させてしまう.ハンドルの軸を中心にした動きとすること.
 [感想:よく言っていることを,ヤンセン氏からも聴けて嬉しかった.]

Q6 エントリーとフィニッシュでのハンドルの上下動について
 「コイン1個のまわりを回るくらいのコンパクトなイメージで」

Q7 ウェイトトレーニングについてはどうか
 エルゴ中心のトレーニングが基本.ウェイトはケガの防止(やリハビリテーション)としてはやるが,専門トレーニングとしては位置づけない.例えばパワーアップが必要といった場合には,エルゴの負荷を大きくしてやるなどの工夫がある.
 [感想:ウェイトが専門(メイン)トレーニングとしての位置を失っていることには異論はないが,一方で,ボートやエルゴの単調な動作メニューだけでは「幅の狭い身体パフォーマンス」しか強化されず,それを補強する意味でのウェイトその他のメニューの意味もあるというのが私の持論.別頁参照.基礎体力やタフネスが充分に養成された段階とローカルレベルでは若干異なる面がある.また,ウェイトトレーニング=ボディビルディングもまた事実ではない.なお最大筋力を伸ばすような方向での筋力トレーニングがローイングパフォーマンスにほとんど寄与しないかデメリットを生じ得ることも事実である.]

Q8 体重を増やすことは必要か?
 体重が軽すぎる(絶対筋量が過小の)場合は,体重を増やす方向もあり得る.ローイングを通じての筋力トレーニングを考えるべき.

Q9 コーチングの語法で,具体的な指摘以外の抽象的あるいは擬音での表現はするか?
 ある.他のものの動きや動作に「たとえる」ことはよくある.
 [感想:擬音やたとえは有効な手段だが,表現したいことと受け手の受ける印象が合致しないかもしれないというリスクにはよく注意しなければならない.とくに擬音(「ぐーん」とか,「ぱしっ」)ではイメージが正しく伝わっているのか,よくチェックしておきたい.]

Q10 コーチと選手のコミュニケーション,練習時とプライベートタイムの使い分けは?
 選手がローイングに集中できるように,プライベートなことで相談に乗ったり,練習以外の時間を割くこともある.

Q11 初心者に教えるときの注意点は? 3年でものになるか?
 まずエルゴで基本動作,次にシングルスカルで10回程度漕ぐことが基本的な手順で,その後でコーチングにかかる.トップレベルになるには10年ほどかかるかもしれないが,個人差があるのでなんとも言えない.3年では多くの場合(トップレベルになるは)難しい.
 [感想:私の初心者コーチングへの注意点としては,マナー(艇の扱いや艇庫でのマナーなどの全般),安心感(水上にでる不安の払拭),漕ぐことの快感,繊細さの感触をこの順で.その後ではじめてテクニカルな指導にとりかかる(若干異なるかもしれないが,別頁参照).また3年でというのは,高校や大学の3年間でという意味だと思うが,いずれの場合も個人差もあり,その学校の年限でできる段階までを着実にステップアップしていってできるところまで,という発想が無理がないように思う.達成できなかった課題を進学または社会にでて引き続きとりくむ発想を育てたい.]


第2日
 午前はまず乗艇指導が行われ,その録画ビデオと世界選手権等のビデオを題材に指導,午後はエルゴを使っての指導と質疑応答

  12 乗艇指導中,待っている参加者への古川さんによる補足説明

12.1 ローイングパフォーマンスの評価法
 エルゴ(2000m,持久漕~パワー漕(デンマークなど),リカバリーテストなど),タイムトライアル(最も直接的だが,1×を除き,個々の漕手の評価が難しい),シートレース(瀬田RCのHP内に掲載の関連ページを参照),乳酸測定,筋力測定(これは古典的),等々ある.

12.2 パワーエンデュランスカーブの測定方法
 測定方法の基本説明と注意点(測定順序やテスト間のレストなどを毎回同一に設定し,正確に測定することを心がける),20分漕に替えてデータの蓄積の多い6kmとしてもよいこと等々.

12.3 リカバリーテストの方法
 (略)

12.4 ステアクライミングのテスト方法
 (略)

12.5 補足
 ローイングが座った姿勢の運動であるため,出力エネルギーを大きくしにくいこと./オーストラリアのトレーニングの組み立ての実例の紹介(似たようなことをやっているということ./トレーニングの強度を何でコントロールするかということ(手段としては,心拍数,乳酸値,艇速そのもの等々)

13 デンマーククルーなどのビデオをみて動作観察
13.1 デンマークFL2×
 (詳細略.ビデオ再生の調子が悪く,詳細の説明には至らなかった.バウがフィニッシュまでにすでにスウィングを終了していることなど)
 [観察:上体のスウィングが,理想とするより過大(特にバウの前傾側)で,また緊張感を感じた(リラックスの不足)など]

13.2 デンマークML4-(ケルン1998):一部理想としていることより故意に替えているところはどこか,その理由は?
 答案(小沢):(1)見て気づく問題点は前後のスウィングが少ない割に上下動(ピッチングよりむしろヒービング)が過大であること.(2)故意の変化は,整調のスウィング動作を故意に大きくとらせていること.その理由はよくわからないが,何かの理由でギア比を軽くしてそれを補ってレンジを大きくさせているか何かか?(スリップが大きいなどの技術的課題があるのかもしれないと思ったが,そのような技術的欠陥では代表クルーに残っていないのではと思い,これは言わなかった.)
 答え:整調の体が小さくそれをカバーして大きな前傾としているが,そのためにスカイアップなどを含め,艇の上下動が大きくなっている.バウサイドのハンドルワークが大きいことも関係する.2番のテクニックが最も良い.(なお課題のある漕手を整調としている理由は,彼が整調しか漕げなかったということである.実際2番にいれて漕いでみたこともあるが,うまく漕げなかった.整調を特別重要なポジションとは考えていない;最後の質問より.また整調はその後,脇腹の疲労骨折でしばらく漕げなかったが,これはレースの前2週間,ラフなコンディションで漕いでいて無理がたたったのではないかと思う.)
 [感想:整調の例に見られるように,過度の(特に前傾)スウィングが脇腹の疲労骨折のリスクを拡大するというように整理できそうだ.ラフも重要な要因であったのだろうが,それよりむしろ姿勢そのものが問題かもしれない.ただ整調の前傾姿勢自体はそれほどヒービングに影響していないのではないかとも思えた.むしろ,バウサイドのハンドルワークの上下動の大きさが問題だろう(キャッチやフィニッシュばかりでなく,全員で艇を少し持ち上げすぎているという感じだ).ローリングも少し生じている様子だった.]

13.3 1×ニールセンの漕ぎ
 グリップワーク(前述11のQ5)のお手本として.(ただし省略)

14 乗艇指導ビデオの再生
 指導のポイントの多くは,ここまでに述べた技術ポイントの反復.(抜粋として)F1×では,ストレッチャーを高く調整して過度の前傾を抑制し,キャッチから強くドライブし加速度的に後傾へ繋ぐことなど(ピッチング抑止を含む).M1×では,加速度的ドライブのことなど.M2-では,キャッチに向かって体の軸を内傾させるのではなく回転させてつかみにいくこと,キャッチやフィニッシュで止まらないこと.F2×では,整調の過度の前傾や,バウの過度の後傾などと,リギングによる調整のポイントやポジションを入れ替えてみて試漕するなど.
 その他,アウトサイドハンドのキャッチではひっかけるような感じでも良いが,きちんとかけて引くこと.
 コーチングの指導は,最も大きな課題(減速の最大要因)から,順に一つづつ解決するようにするが,それは技術練習だけでなく常に言うようにしている.ただし,始終コーチが言っているだけではだめで,選手自身がそのことを自分の頭で考えられるようにすることが大切で,選手が考える時間を大切につくることも同時に重要である.

15 質疑応答(抜粋し,一部のみ整理すると..)
 デンマークの強さの理由について.いくつかの要因を整理すると,デンマークではクラブチームを主体として12才頃から漕ぎ始め,25才頃にはナショナルクルーを目指すなど,一般に漕歴が長い.またコーチが毎日トレーニングを見て,目標をしっかり設定している.小さな国なので中央に集まりやすいなども環境要因として挙げられる.
 ローイングで一番重要視していることは,技術に関しては「キャッチで水をつかむ前に足で蹴るな」ということ.また,練習を一生懸命するということに尽きる.


 [感想(まとめ)]
 2日間のセミナーは,有意義であった.上体をリラックスさせて下げることについては,前述のとおりであるが,もういちど補足すれば,このセオリーは上体のスウィングを比較的小さく設定し,比較的ハイレイトをねらい,キャッチやフィニッシュの技術的高さがなければ単に弱い漕ぎになってしまうだけに終わるだろう,ということに注意したい.上体の丸さが腰痛のリスクを拡大するのではないか?という不安については,特に太田川水域では,12月12日と1月10日の勉強会(別ページ参照)で,ある程度詳しく補足できると思う.

 またこの種のセミナーの開催についてひとつ提案したい.大変有意義であり,費用対効果の点で漕艇人口の集中する戸田および瀬田で開催されるのはもちろん基本的に理解できるし,運営者のノウハウもそれぞれ,戸田のスタッフや瀬田RCのスタッフでなければうまくいかない面もあるに違いない.が,敢えて提案させてもらえば,このようなセミナーの一部(たとえば2会場のうち1会場)を地方(例えば,北海道・東北地方北部,日本海側(新潟あたり?),九州北部の3会場あたり)で持ちまわりというのはどうだろう?地方の普及やレベルアップに多いに貢献するのでは?もっともそういう願いは口をあけているだけではだめで,地方の声を大きくしなければならない.
 またコーチのレベルアップは,なにもセミナーの受講やその内容をそのままコピーするだけではだめで,コーチ自身が自ら工夫創造し,開拓しなければならない部分が多い.運動生理学的な原理やトレーニング手法の情報や基本セオリーが比較的わかってきたからといっても,それは実際にコーチングする上での骨組みの10%のようなもので,肉付けの90%の工夫がいると考えるべきだろう.


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