7-01 視覚障害のための技術練習

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第七章、第一項、タイトルは「視覚障害のための技術練習」です。時間は約四分です。
一、漕艇経験と視覚障害。
漕艇経験があって、あとで視覚障害となったケースでは、ボディワークやブレードワークのイメージはすでにあるでしょう。その場合は、技術習得のポイントは、ブレードと水面の隙間のイメージや、ブレードの深さの制御と、クルーのユニフォーミティの実現の二つだけにポイントが絞れます。
一方で、漕艇経験がなければ、ボディワークやブレードワークのイメージを、適切に構築するところから始めなければなりません。
二、体の動かしかた、ボディワークの習得。
体の動かし方のことを、ボディワークといいます。まずロウイングエルゴメータで、動作をマスターすることから始めましょう。
安定した陸上環境の中で、レグ、ボディ、アームの三つの部分の動きを理解していきましょう。 レグとは脚のことです。ボディは体、アームは腕です。フォワードとドライブのそれぞれで、どのように動かすかを習得していきます。
お手本の動きをしてもらって、その体やハンドルに触れて確認したり、並べたエルゴのハンドルをパイプでつないだりして、動きを揃えていく方法があります。 いろいろと工夫しながら、動作を理解していきましょう。
三、ブレードワークの習得。
ブレードワークとは、オールの先、ブレードの動かし方です。 キャッチやフィニッシュでのブレードの上下動、バランス、フェザーやスクウェアは、実際に乗艇で習得していきます。最初はできるだけ快適な、水面のコンディションの良い状況で練習しましょう。 またフォアであれば、ペア漕ぎなどで、バランスの良い状況で、基本的な動きを実現させていきましょう。見えない、または見えにくいブレードの動きは、コックスの解説などを頼りにして、しだいにハンドル、シート、ストレッチャーなどを通じて、オールだけでなくボートの動きとの関係の中でつかんでいくようにします。弱視で、少しでも見える状況であれば、横を向いてみても構いません。
四、クルーでのユニフォーミティー。
クルーのユニフォーミティー、つまり「合わせること」は最も重要な課題です。 一般に、「ソーオ、キャッチ」、「フィニッシュ」といった声によって、キャッチ、フィニッシュのタイミングを合わせます。これは、パラロウイングに限らず一般によく行われます。視覚情報に頼れない場合は、それが唯一不可欠の情報にも感じられます。しかしそれだけでは、フォワードエンドで合図を待ってキャッチする欠陥漕ぎに陥る恐れがあります。
むしろ大切なのは、シートやストレッチャーから伝わるボートの前後運動の感触と、シートやキャッチ、フィニッシュの音を聴いて合わせようとすることです。リズムの形成が大切です。 静かな状況であれば,声を出さなくてもユニフォーミティを形成できます。テクニックを向上させれば、コックスの声ではなく、キャッチの音で精密に合わせていけます。ただし、橋の下の騒音や風の音、そして波でブレードが水面に接触する音などで混乱することもあり、その場合はコックスの声も重要な役割を果たします。

以上で、視覚障害のための技術練習を終わります。