6-04 水中での身体反応と対策

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第6章、第5項。タイトルは「水中での体の反応と対策」です。時間は約四分です。

1。ラクスイ直後の身体反応と対策。
デキスイ、つまり水におぼれる状態には、カンセイデキスイというのがあります。
乾燥した、性質、溺れる、水と書きます。 肺に水が入っていない状態でも溺れます。 冷水が、鼻の奥や喉を直撃すると、ショックで空気を吸えず窒息する状態のことです。 立った状態で足から飛び込むと、鼻の穴に下から急に水が入り、比較的簡単に起こると言われています。 水に入る時は、息を大きく吸い、鼻をつまみ、口を閉じてゆっくり入りましょう。

低温ショックというのは、冷たい水に入った直後、ショックで速くて不規則な呼吸が起きる状態です。 約一分から三分程度で落ち着きます。 しかし、方向感覚、衡感覚を失い、パニックになる危険もあります。 落ち着いて、波に背を向けて顔に波を受けないようにします。

2。低水温での身体反応。
空気と比べると、水は、熱伝導率で約二十五倍、比熱で約4倍です。 つまり冷たい水は、空気よりもはるかに速く体温を奪います。
低体温症というのは、体の深い部分の体温が三十五度以下になり、激しい震え、意識混濁、感覚喪失などの異状が始まる状態です。 三十四度から三十度で、衰弱、心拍低下、不整脈、筋肉硬直などに進行します。 三十度以下になると、眼の瞳孔が拡大し、筋肉が弛緩し、ほとんど死んでいるように見え、さらには死に至ります。
泳げる者が、岸の近くで溺死した例も多くあります。 冷水では、時間とともに急速に泳げなくなります。

3。具体的なリスク評価とジョウテイ対策。
事前に「チャクイエイ」、つまり衣服を付けたまま泳ぐ訓練をしておくことが有効です。 乗艇の衣類は、ラクスイ時に泳ぎやすい、フィットしたものが大切です。
水温約十五度以下は、かなり用心すべき冷水と考えます。 安全時間は水温かける3倍を、フンとして読みます。 例えば、水温十度の時は、十かける三で、三十。これを時間と読み替えて、三十分となります。
この三十分以内に、「脱出・救助ができる手立て」をジョウテイ条件にするということです。 パラロウイングで、経験の浅い場合は、三倍ではなく、二倍とします。

4。ラクスイ時の行動の要点。
水中では、体温を低下させないために、あらゆる努力をしましょう。
救助・上陸後も死亡した例があります。陸上に上がっても、完全に落ち着き回復するまで、つづけて用心しましょう。 泳ぐのは最後の手段です。まずは艇にとどまるのが原則です。
ボートに乗り込む努力は、それなりに体力を消耗し、体の熱も損失します。 すぐに回復できなければ、回復努力はやめ、救助を待ちましょう。
できるだけ水上(転覆した艇の上)に体を出すことが、冷水中では大切です。 転覆した艇の上によじ登ってもかまいません。
体熱を維持するために、衣類、帽子、靴下を脱がないようにしましょう。
運動は体の熱を多く産み出し、そして激しい水流が熱を急速に奪います。 水中では激しい動きを避け、できるだけじっとします。
救命胴衣があれば、(体を丸くした)水中安静姿勢をとります。
また、クルーでは集まって輪になり、寄り添います。ハドルと言います
。 体温を奪われやすい人、例えば小さい人、やせた人、着かれた疲弊した人を、輪の中にして守ります。

以上で,「水中での身体反応と対策」の説明を終わります。