質問:ボートって危なくないですか?

OZAWA ROWING update: 2018-01-05


安全を身につけるところからはじめよう

 危険か安全か? すべての活動,スポーツがそうであるように,あるケースでは安全が十分に確保できているだろうし,別のケースでは危険な状況がありえます. ローイングというスポーツの危険な要素とはどんなことか,どのような事故がどのくらい発生しているのか,まずその事実を正しく認識する必要があります.
 「危険か安全か」は,環境,クラブや指導者,個人の能力によって大きく異なります.また人ひとりとってみても,経験の積み重ね,日々の体調・精神状態,また特に「危険にどう対処するかの方針」次第で,安全レベルはかなり変わってきます.「危険」は,固定的なモノサシでは測れなく,いつも変化している流動的なものです.
 また,「自然」の中で活動するアウトドア型のスポーツが,とりわけ,不注意,油断,準備不足,安全対策の不備などによって,かなりストレートに身の危険を招くという現実も認識しておかなければなりません. 自然は,(私たちをやさしく包み込む存在であると同時に)場合によっては,容赦のない世界となります.

 「危険」に対して3つの選択肢?があります.A:危険と思われることをすべて避け,ほぼ確実に安全な(と思う)範囲でだけ行動すること. B:自分の能力と危険を正確に読み,活動を「慎重に」拡大すること.C:一か八かやってみる…? Cはもちろん,ここでは論外ですね(笑).さてAかBか.Aがいちばん安全に見えます.確かに直面する危険・事故には会わずに済むかもしれません.しかしその選択は,個人の安全確保の能力を結局は萎縮させ,行動範囲を確実に狭めていきます.それは,「将来の危険を増加させている」とも言えます. そこで,Bを選択してほしい,というのが結論です. でも,実際の活動では,AとBの境がどこか?,今の活動よりもう少し踏み出して良いかの見極めが大切なのですね.
 正しく自分の安全能力や潜んでいる危険を読み取り,またちゃんとした安全技術を習得し,そして様々な経験を積むことで,「安全を確保しながら同時に自分の安全の能力を高めていく」ことができます(その効果はローイングだけに限定されません). それを実現するためには,「自分の命を自分の責任と権限で守るようにできる」ためには,まずローイングと安全について,正しく理解し指導できるクラブ,指導者を確保することです. しかし,それにめぐり会えるかどうかは運任せ…? では済みませんね(笑).もし選択の余地なく,すでにあなたにクラブ・指導者がいるとすれば,そして不幸にも!クラブ・指導者に対して「どうも自分の安全能力を高めてくれていないのでは」とか,「安全に気を配ってくれず,危険・恐怖を感じる」とか感じたら,安全についてよく話してみるとか,別の関係者に相談してみるとかすべきです. 何よりも,結果が降りかかってくるのはあなた自身であることをお忘れなく.

 水の上に漕ぎ出すことに怖さや危なさを感じるのは,きわめて大切で健全な反応です.その感覚を麻痺させないようにしなければなりません.まず確実な安全をつかみ成長させながら勇気を持って漕ぎ出すことで,水の上でしか味わえない独特の感触を見出すことができます.それは,怖さを乗り越えて獲得した新しい世界の実感であり,同時になつかしく安らぎのある感触でもあります.


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