キングストン(弁) kingston (valve) = drain

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漕艇関係でのキングストンは,船底にとりつけられた「排水栓」で,フィックスやナックルフォアなどについていたものを指す.カッターボートなどにも取り付けられている. 艇を裏返すことなく,艇内に入った水を排出するための部品で,重量艇では必須である. しかし現在のカーボンナックル艇やシェル艇にはついていない.
キングストンの名前は,本来は,船舶用止水弁のメーカー名に由来する.(以下は主に,Wikipedia 「キングストン弁」を参考に編集)
帆船に代わった蒸気船では,船底の蒸気機関のボイラーのための冷却水が必要となり,取水口を喫水線より下に設ける設計がなされた. そのため,浸水事故を防止するために,確実に閉鎖できる止水弁が求められた. その止水弁として,英国人のジョン・キングストン(John Kingston,1786-1847)が創業したロサンゼルスのF.C.キングストン社に由来するというのが定説である(ちなみに,キングストンは,King Stoneかと思っていたが,どうもKing's town(王の町)に由来する地名や人名らしい).
さて,キングストンが1908年から製造した小型止水弁が多用されるようになり,キングストンコック,漢字では「金氏弁」と呼ばれ,同等機能部品の代名詞となった…と. しかし,日露戦争(1904年-)の旧日本海軍で,既にこの名称が使用されているとの記録もあるようで,名前の由来はまだ奥が深そうだ.
現在の船舶用語で,キングストンは,潜水艦の潜航・浮上用タンクのバルブを指す. 他に同様の機能の止水弁は,「船底弁」,ハル(船体)を貫通することから「スルーハルバルブ」,船内から見て海に通じることから「シーコック」などと呼ばれることもある.このような,本来の取水目的の「キングストン弁」は,機関の冷却水の他,現在では,バラスト水の積み込み,消火用水,戦闘艦艇では,弾薬庫への引火を防ぐ緊急注水,被弾浸水による傾斜の復原のための注水など,様々な配管系に用いられ,弁の構造にも多くのタイプがある.
取水管だけでなく,陸揚げ時のドレン抜きやトイレなど排水管の弁も「キングストン」と呼ばれるようになり,競漕艇での「キングストン」は概ね,この排水のための穴にとりつけられた「止水栓」またはそれを含む部品全体を言う.
余談:キングストン弁が「自沈するための専用弁」という誤解もあるらしい.[2019-2-18] Kingston cock
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