グリース,グリス (grease)

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J: グリース(グリス)は,もともと溶けて柔らかい動物性の脂肪のことだが,今では,潤滑に用いる粘度の高い油脂は石油化学精製されたものでもすべてグリースと総称するようになった.オールのスリーブは,昔は牛皮などでできていて,グリースを塗ることで摩擦を減らし,フェザーターンの動作を容易にした.グリースは必需品だったのである.乗艇前に,スリーブに丁寧に塗らなくてはならないが,乗艇中にグリースは,牛皮に浸み込んだり,水に洗い落とされたりして次第に失われ,ターンしにくくなっていく.乗艇時間にあわせて適量のグリースを塗るのが舵手の腕のみせどころだった.また遠漕などの長い乗艇では,乗艇中に補充できるよう,小分けして持って乗ったりもしていた.また,乗艇後は,新聞紙やウェスなどで拭き取らなくてはならなかったので,よく新聞紙を艇庫に持参していたものだ.
しかしその後,スリーブは熱収縮性の軟質塩化ビニル樹脂に代わり,浸み込みがなくなったのでグリースは少量で済むようになった.
さらに時代が進み,プラスチックスリーブになった.スリーブ自体が比較的容易にターンできるので,ほとんど潤滑の必要がなくなった(かに見える).それと,プラスチックが,グリースで変質・変色するのが嫌われ,メーカーでもグリース不要と言っている.しかし明らかにグリースやその他の潤滑剤を塗布した場合と何もしない場合では,ターンの容易さや,スリーブの消耗が異なる.今でもグリースを塗布してかまわないと思うが,しかしグリースでは砂埃が着くとかえって事態を悪くするといったことがあり,それが短所である.現在では,グリースに代わる潤滑剤として,シリコン樹脂スプレーのようなものが登場し,スリーブ回りの潤滑は非常に楽になった. (2007.2.21)
grease
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