第6章,第2項. 事故の予防と発生時の対処。 1, アダプティブロウイングと危険。 ボート協会、クラブ、コーチの一部には、アダプティブロウイングの事故のリスクを、過剰に不安視・危険視し、「できれば受け入れたいのだけれど」と言いながら,「実は関わりたくない」と敬遠する傾向がみられます。 それは、Rowing For Allの理念に反することであり、とても残念です。 Rowing For Allとは、ただ競漕の頂点を高めようとすることに終始せず、ロウイングのすばらしさを望む者は誰でも歓迎し、また門戸を広く開放し、仲間を増やそう,という思想です。 それには、「余力を分け与える」という意識ではなく、「自分のロウイングの一部を、そのために削る,ささげる」という意識が必要です。 アダプティブクルーは、健常者のクルーと比較すれば,もちろん注意・配慮すべき点が増えますが、それはすべて克服できる性質のものです。 むしろ、危険を常に意識できるアダプティブクルーのほうが、安全レベルを高くできることさえあります。 勇気を持ってとりくみましょう。 少なくとも,事故の危険や安全責任を言い訳に、ロウイングのチャンスを制限されるべきではありません。 2, 事故の未然防止。 事故のリスクを下げるために、気をつけるべき要点を整理します。 「今日は絶対安全」といえる日は壱日もありません。 「無事故の実績にあぐらをかかず」毎日、謙虚な姿勢で練習・乗艇時に臨み、「安全・危険」を意識しましょう。 体調や練習の日程において,無理をしないようにしましょう。 自分の安全能力を過信しないこと。 数年の漕歴ではまだ充分ではありません。 クルー編成では常に、「安全上の弱点」を意識し、安全な編成を心がけましょう。 適切な整備・安全装備を心がけ、問題のある状態で乗らないようにしましょう。 泳げることが原則です。 泳げない人や低水温の際は、個人救命具を「着用」しましょう。 小艇に乗る場合は特に、沈の対処法(回復練習)を習得しておきましょう。 安全講習会などで、過去の事故や事故発生時の対処法などを、学習しておきましょう。 3, 事故発生時の対処,6つの原則。 事故の発生時には、以下の6つの原則を守ることが、とても重要です。 1,あわてない: まずおちつくこと! パニックは行動を誤らせ、ダメージを拡大します。 2,艇から離れない: 「艇につかまったまま、風や波に逆らわずに」浮かぶことが大切です。 わずかな距離でも、泳ぐのは最後の手段です。 波や風、流れ、低温、練習の疲れ、衣服などで、すぐに泳げなくなるかもしれません。 3,体を水上に出す、激しい運動をしない。これは、体温保持のため重要です。 4,あきらめない。生命の危険が迫っているときの最大の鉄則です。 5,生命第一で行動。 一旦事故が発生したら「絶対に身を守る、生命第一で行動」することを「強く意識」しましょう。「流れるシートをとりに行く」、「艇を傷つけないように」といったことは忘れましょう。 6,鉄則はない.臨機応変に柔軟に対処。『絶対の鉄則』はありえない」ということです。 結局、最善策は「臨機応変」という言葉が,最もふさわしいといえます。 以上で,「事故予防と発生時の対処」の説明を終わります。