新しい水域でローイングを始めるために

OZAWA ROWING update: 2000-08-03


「はじめまして。***町に住む***といいます。兄が***で漕艇部にいました。兄の話でボートに興味を持っているのですが、社会人になりなかなかボートを始めるきっかけがないままですが、HPを見て再度「ボートを始めるには」と思っています。***町は***湖のある町でボートをするには恵まれているのですが、町にボート協会はなく、近くでは***湖まで1時間掛かります。何歳になっても、自分のために出来るスポーツだと思うのですが、とっつきにくいのも事実です。始めるにはどういったことをクリアする必要があるか?(経済的な面、安全確保の面…)教えていただけたらと思っています。」

 こんなお便りがとどきました.ボートをはじめたいと思っている多く(?)の人のための,最初の関門をクリアするための助言となれば,と思い以下を書きました.もちろんすでにローイング活動のある水域であれば,その水域のRCに声をかけてみれば良いでしょうし,経験者であればそれなりになんとかやってみるということもできそうです.が,この方のように,漕ぎたい場所(漕げそうな場所)が身近にあるがそこではボートをやっていない,自分は初心者,そういうケースでは「ちょっと無理だ」となりそうですが,課題をひとつずつ丁寧にクリアすれば,漕ぎたい気持ちさえ強ければなんとかなると思います.初心者が新しくボートを漕ぎはじめるために考えておきたいことをまとめてみました.


 さきに結論を整理すれば,
  1. 安全と水域の管理機構に対するチェック,充分な配慮を怠らない.
  2. 同じようにそこで漕ぎたがっている人や経験者が身近にいないか探す.
  3. 近くの水域のローイングクラブや都道府県ボート協会などに相談する.
  4. 安全の技術を身につける.
  5. 自己責任と,事故の場合の周囲への迷惑をわきまえておく
といったところでしょう.それでは以下に,いくつか細かいことについて述べてみます.
1 水域の確認:安全に漕げるか?漕いで良い場所か?
 目星をつけた水域が,漕いで良い場所か?安全に漕げる場所か?を確認しましょう.原則的に,私有地でないところの川や湖,海は公共水域,つまりみんなのものなので,個人が独占的に占有したり,環境を破壊するような使い方でなければ自由に通過したりローイングを楽しめるはずだと思います.しかしいくつかの理由,例えば公共事業での占有,自然環境の保護,観光(景観保全),水上交通(航路またはそれに順ずるもの),漁業,安全(危険水域)などのために,立ち入りやボート漕ぎが制限されているケースもあるので,誰も漕いでいないようなところでは,そのような制限がないかを確認しておくべきでしょう.看板などをチェックします.ボートを漕いでいなくても,すでにカヌーなどが楽しんでいて問題となっていない水域であれば,この条件はおそらくクリアできるでしょう.ただしその水域の開拓?に先人の努力があったかもしれません.先にカヌーなどが活動しているのであれば,その経緯についても留意しておきましょう.
 漕いでかまわない水域だとしても,安全に自分が漕げるかどうかはよく確認する必要があります.たとえばカヌーで安全でもボートでは要注意ということもあります.カヌーとボートの違いは,ボートが後ろ向きであること,オールの漕ぐ幅が必要であること,スピードが速いこと,波に対する弱さ(もっとも,オープンデッキカヌーと安全な機構を備えたシングルスカルでは,シングルスカルのほうが安全であるケースもあります)などです.気象条件,水温,流れ,危険な暗礁などにも注意すべきでしょう.そのなかで,自分の技量の範囲で,安全に漕げる条件の中で漕ぐようにします.あるいは,漕ぐ場所と条件を選びましょう.といっても初心者では何をどう判断するかは難しいところです.そこで…

2 同じようにそこで漕ぎたがっている人や経験者が身近にいないか探す
 で,一人で漕ぐのもいいものですが,仲間がいればもっと楽しいかも.同じようなことを考えている仲間を探すのも良い手だと思います.いまではこの種の手段としてインターネットは良い道具のひとつでしょう.

3 手続き:ボート協会への登録?・ローイングクラブへの入会? まずは相談を
 「ボート競技」としては(社)日本ボート協会と,各都道府県のボート協会があるので,そこへの登録が必要ですが,楽しんで漕ぐだけであれば,選手登録はいりません.ただし,協会や近くのローイングクラブに相談してみるのは基本的に良いことだと思いますので,ぜひ相談して見ては?と思います.(注:場合によっては裏目に?でるかもしれません.が,どの協会にも理解のある人がいることを信じて…いや期待しています.)
 もし水域でカヌーなどの活動がすでにあれば,カヌークラブに相談して見るのもよいかもしれません.大切なのはスポーツのジャンルや組織でなく,理解ある協力者にめぐり合えるかどうかかもしれません.

4 安全の技術を身につける=良いコーチをみつける
 ローイングの技術修得には大きく2つのステップがあります.
 第1段階は,艇を(安全であるように)ただしく点検・整備し,水域や気象の危険に配慮しながら安全に艇を漕ぎ,沈などの少し危険な状況に陥ったときに安全に自力で回復する技術の修得です.第2段階は,(レースを目的とする場合に必要なことですが)より速く進むためのさまざまなトレーニングやローイングテクニックの技術の習得です.第1段階は,(漕ぐ目的をどこに置くかにかかわらず)すべてのオアズマンが初心者の段階で「少し時間をかけてきちん」と修得すべきことだと私は考えています.が,残念ながら実際には,レースを目標とする多くのクラブで,指導者がこの段階に充分な時間をかけていないと危惧しています.
 さて初心者がとりくむ場合も,まずは第1段階を技術をきちんと身につけることが先決となります.それを具体的にどう身につけるか?ですが,図書やインターネット上の情報,ビデオなどで,初心者の第1段階の技術修得にお薦めできるものはなく,またそういう媒体をいくら読んでも,安全確保の充分な技術を得られるとは思えません.独学で身につけるということは,個人の資質にもよりますが,少なくとも万人に推奨できるものではありません.スポーツにもよりますが,やはり自然を相手にしたこの種のスポーツでは,実際に経験者に教えてもらうのが確実です.よい指導者を探すことです.

 なお,スポーツ安全保険や漕艇保険などへの加入もぜひ検討すべきですが,ここでもボート協会やクラブに所属することのメリットが生まれるので,近くのRCに所属させてもらって,そういう手続きをきちんとし,すこし安全に漕げるまで少し離れたところまで通い,安全に漕げるようになったらいよいよ目的の水域で,というところでしょうか.

5 安全への自己責任の心構えと,事故の場合の迷惑をわきまえておく
 さて,安全に漕げるようになったとしても,水上で漕ぐ以上リスクはもちろんゼロではないので,万一事故(主には自分自身の遭難)の場合の自己責任の意識は当然ですがしっかりもっておくべきです.そしてそれだけでなく,事故が発生すれば,当然(その事故が個人的な問題だと自分自身が了解していても)ボートの事故として報道され,影響は指導してくれたRCや地元の県協会,漕艇界全体に波及する問題だということを覚悟しておかなければなりません.だからどう,ということもないのですが,結局,安全の確保を考える場合,たとえシングルスカルを漕ぐ場合でも,自分一人のこととしてとらえるのでなく,みんなのためにも安全を確保しなければならないという責任を自覚して漕いでほしいということです.

6 どのくらいお金がかかるか?
 もしローイングクラブに入会できれば,多くの場合(少なくとも最初のうちは)初心者が自艇やオールを買い揃える必要はなく,おそらくクラブや個人の所有艇を借りることで始められるでしょう.クラブではおそらく,所有艇やオール,諸設備の維持管理・更新,クラブの活動形態によって会費などを設定していると思うので,クラブの会費,規約などをよく確かめておきましょう.もし単独で,艇やオールを購入するとすれば,ごくベーシックなシングルスカルとして(維持管理費用も含めて)約30万円程度の出費は必要でしょう(レクレーショナルスカラー向きの安価な艇としては,桑野のツーリングスカル艇を推奨します.詳しくは桑野造船のホームページなどを参照).艇のメンテナンス費用は,大切に使う限りわずかな額で済むかもしれませんが,その他の費用として,スポーツ安全保険や漕艇保険(加入にはボート協会への登録が必要)などのことも考えておくべきです.

7 艇を保管する場所の確保
 水域に隣接して艇を保管する場所(野ざらしにせずまたいたずらされない施設)を確保するか,あるいは安心できる保管場所から水域への簡便な輸送手段を確保する必要があります(詳細省略).


 新しいことにチャレンジするにはもちろんリスクはつきものです.自然の中で行うスポーツではそのリスクの中に,自己の安全に関するリスクも留意すべき重要さで存在することを認識しなければなりません.しかし,リスクを恐れて諦めるとすれば,そこから得るのは,「とりあえずの」安全と退屈さだけでしょう.リスクをわきまえ,一つずつをクリアし,確実な安全の能力と実践,そして大きな充足を得ていくことがすばらしいことだと思います.がんばってください.

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